◎平成28年3月

 去る4月24日、私の成長を見守ってくれた祖母が97歳で旅立ちました。90を超えても庭に出て草取りをするスーパーお祖母ちゃんでした。
 私の年齢は、まだ祖母の人生の半分にも及びません。祖母に比べれば恵まれた社会環境で育ってきた世代であり、恵まれているが故に、対極の〈楽しみ/喜び 甘み/旨み〉に目を奪われやすい、まだまだ薄っぺらい人生なのかな?とも思います。
 喪主を務めた父曰く「18歳で寺に嫁ぎ、70年余り…」。最期の別れの折、両手で触れたその顏に刻まれたシワの一つひとつには、孫である私が知らないような困難や苦労があったことでしょう。ご本山に上る時、法衣の裂けやすい箇所を一針一針補強してくれた優しさ、そして時にはモノの道理をビシッと伝えてくれた厳しさは、シワに刻まれた経験から来る思いやりだったに違いありません。
 祖母の歳まで重ねられるか分からない人生ですが、様々なことを味わいながら、いただいたご恩を次の世代へ伝えていきたいと思います。

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