◎平成29年5月(平成29年1・3月都合により掲示取替無し)

 温泉旅館の宴会場へ赴いた時、係の方に「スリッパはそのままで結構です」と促されても、かえって居心地が悪く、お声掛けに反して自らむこう向きにそろえることしばしばでございます。修行道場で厳しく指導いただいたからでしょうか…私にとって、履物をむこう向きにそろえることは、ごく当たり前のこととして身にしみついています。私のみならず、和尚様方が集う席の履物は、いつもきれいに並んでいるものです。
 「たしなみ」を辞書で引けば、「普段の心掛け・用意」と意味が出てきます。誰から強制されるものではない自発的な行いととらえることができるでしょう。
 どんなに立派な玄関だとしても、そこに並ぶ履物が乱雑であったならば、折角の家構えも台無しです。お手洗いのスリッパも同様。誰かが乱しておいたら、自発的な「たしなみ」でそっと並べなおすお気遣いを…。そんな心掛けの積み重ねは、履物を揃えることのみならず、延いては、日々自分の在り方を見つめることにつながっていくことと思います。

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